このビデオカセット、見たことが無い方がいるのではないでしょうか?それもそのはず、このカセットは松下電器産業(現・パナソニック)が発売していた“VX方式”のビデオカセットテープです。
このVX方式は初期の家庭用ビデオ規格の一つで、当時松下グループの中で絶対権力を持っていた“松下寿電子工業(後のパナソニック四国エレクトロニクス、現・パナソニック ヘルスケア)”が独断で開発した規格であると言われています。
VHSテープとの比較。厚み・大きさも含め、VHSを大きく上回っていることがわかります。この大きさから、ドカベンカセットと称されることも多く、秋本治先生の漫画である“こちら葛飾区亀有公園前派出所”においてもこの名でカセットが登場し、デッキ(VX-2000)も登場したため、VHS以前のビデオカセット規格としてはVコードなどと比べると有名で知名度は高い方であるようです。
なお、デッキは四国で限定発売された“VX-100”という機種と、後に一般販売された“VX-2000”という2機種のみ。その後、松下電器産業の創業者である松下幸之助氏はVX方式ではなく、日本ビクターのVHS方式の採用を決定。ナショナルは“マックロード”というブランド名でVHSデッキを発売、ヒット商品となります。
テープの裏側です。上側の穴がヘッドが潜り込むための穴で、下側がテープのリールの巻き込みを行います。
それでは、その構造を見て行きましょう。
上側の穴部分です。普段はテープを保護するためのカバーが取り付けられており、カバーを取り除いています。
VX方式はVHS方式と同じヘリカルスキャン方式を採用していますが、VHS方式ではテープをカセットから引き出してヘッドに巻きつかせるのに対し、VX方式ではカセット本体にヘッドを潜り込ませるという方式を採用しています。写真の穴こそがヘッドが潜り込む部分であり、テープが螺旋を描いていることがわかります。
このテープを巻きつけた様子がα状に見えるため“α巻き”と呼ばれています。この方法を用いると、VHS方式のようにテープを引き出す必要が無く構造を簡素化できますが、テープに負担がかかりやすく、テープが絡まりやすかったり、切れたりするトラブルがあったようです。
テープを分解してみた様子。リールは2段重ねになっていて、上側のリールが送り側、下側のリールが受け側になっています。
それにしても、テープカビだらけですね。デッキがあっても再生したくないなぁ(w。
ちなみにこのカセットはごみの日に落ちていたのを発見、拾ってきたものです。デッキは残念ながらありませんでした。
記録した内容を消さないようにするには、カセット左下にある“誤消去防止キャップ”を取り外します。取り外したキャップは無くしてしまいそうで怖いです。
専用のビデオカセットは1990年頃まで売られていたようで、“90年秋・冬号”のカタログにて端の方に<VX-2000用>として紹介されていました。 この記事で取り上げた60分用のVZ-T60Nが3760円で120分用のVZ-T120が5640円という高価な価格です。
ちなみに同じカタログで紹介されていたS-VHSテープの120分が1700円ですから、当時としても相当な価格差であったことが伺えます。それでもこのテープを買っていた人はいたのだろうか?
こういうのを見るとソニーのβmaxはそこそこ成功したのでは?と思えてきます。それにしてもテープ高い…
返信削除ゴミ捨て場は案外侮れません。ポータブルオーディオが捨ててあったりすると中に記録メディアやガム電池が入っていたりするので。
アニメやマンガで実際の機器を登場させるのはよくあることみたいですね。有名なのはエヴァのS-DATでしょうか。
ベータマックスやVHSはまだ成功したほうなのではないかと思います。両者ともテープはまだ売られているのが、その証拠といえるでしょう。
削除それ以前にもこのVX方式を始めとする家庭用ビデオカセットの規格は数種類ありましたから、その頃のデッキを買った方のほうが悲惨と言えそうですが…。
ちなみにエヴァンゲリオンのS-DATは実在の機器ではなくて、架空の機器です。実際の「S-DAT(固定ヘッド方式のDAT)」は規格上のみのものであり、製品化はされませんでした。
実在しないのですか。規格だけのを採用とはマニアックな…
返信削除他にフロッピーやMDっぽいディスクが「禁断のディスク」的な扱いで良く出てくる気がします。
VHSは別としてβテープもそういえばまだ販売されていますね。思い出してみるとDATテープもまだ販売されていました。
DATデッキとHi8デッキは異常に高価でイマイチ手が出せないのですよね。Hi8はダビングしたいので探しているのですがドフのジャンクで2万円なのです。
テープの持ち運びを考えるとちょっと大変そうですね。
返信削除ベータはテープがVHSより小さいけども、本体を開けてみると異常なほどの複雑さに驚き、何よりヘッド汚れによる映像乱れがVHSより早いような気がします。
その後のビデオカメラのほうではVideo8が優位になるも、最近になって欠点が表れたような気がします。
1万で入手したHi8+VHS複合デッキが1ヶ月ほどで壊れて今はダビングはビデオカメラ(CCD-EZ10)を使わなければならない事態となっています・・・
親父は当初はVHS-Cユーザーでしたが、何本か8ミリで録画したものもあります。
調べてみるとエヴァンゲリオン(舞台(第三新東京)のモデルが近いのに実は一度も本編を見たことがないと言う恥ずかしい思いをしている)作中のSDATはDAT+DCCのような感じなのでしょうか。オートリバースっぽい動作があるそうなので。